カラオケ喫茶アンソロジーノート (14) 私が愛した名画座
1970年代の話がつづくが、当時ボーリングやビリヤードその他娯楽は
色々あったが、私にとって最大の娯楽は映画であった。ほとんどは
「名画座」と呼ばれる旧作2、3上映される映画館で見る映画である。
「名画座」という概念ははっきりしない。新作上映の「ロードショー館」に対する
旧作上映館と大まかに分けられる。
旧作といっても東京での話だが当時は私鉄沿線各駅毎に1~3の映画館があり、そこで
上映されるのは映画会社の旧作(寅さんシリーズやドリフターズ、時代劇、東映のヤク
ザもの等)から日活「ロマンポルノ」先日なくなったあの若松孝二監督の独立プロ系の
「エロ映画」まで様々であった。
ただ私の定義としてはもっと狭く解し「名画座」とは旧作でもその名のとおり洋画邦画
を問わず名画といわれる映画を上映する映画館としておく。
ただ何を基準に名画なのか?と言われたらこまるが「ロマンポルノ」だって名画という
人もいるだろうし、むしろ映画館の上映する映画の質を見て観客の側で「名画座」だと
定義づけたと言っていい。
そして値段。とにかく安かった。70年代から80年代前半にかけて300円~400円だったと
思う。ロードショー館が前売りでも1200円以上したから同じ値段で4,5回見れた。
その代わり肩や腕が触れ合うくらい椅子の間が狭く隣に女の子が座った時に裸の画面が
でたりしたら、冷静さを装おっても生唾飲む音が丸聞こえで照れ臭い思いをしたりした。
学生時代は授業をサボってよく見にいったものだ。週に2回はいってたかな?
一人で行くか、大抵は友達と行っていた。デートで行った覚えはない。デートはロード
ショーに格好つけていってた。つまりそういう位置づけの場所だった。
映画見た後、喫茶店に入って見た映画の話をし、飯食って映画の話をし、居酒屋に行って
又映画の話をする。3,4人で見にいった時は大変だった。全員が評論家になりアルコールが
入るほどボルテージがあがり、「あそこの演出が見事だった」「三国連太郎はさすが。あの
間と表情は素晴らしい」「あの場面でのカット割りはないよなー」「マックィーンの……」
気がつけば終電の時間になってることが何度あったろうか?
今はなくなってしまった高田馬場「パール座」池袋「文芸地下」大塚の「大塚名画座」銀座
「並木座」飯田橋「佳作座」渋谷「前線座」そしてまだ頑張ってる「早稲田松竹」池袋「文芸
座」 今、目を閉じればよみがえるあのシーン。よみがえる我が青春の憩いの場所、私の愛した
名画座。
