大和レジデンスオーナーの独り言 (32) 四国こどもとおとなの医療センター
四国こどもとおとなの医療センターが5月1日オープンして2月が経過しよう
としている
成育(こども)の病床411床、成人(おとな)の病床250床、集中治療室28床、合計689床。
47診療科(まだオープンしてない科目もある)
大きさを誇る数字が並ぶ。
その機能として今までの二つの病院の持つ特徴に加えあらたに循環器病センターと脳
卒中センターを整備し、香川県の総合周産期母子医療センター、小児救急救命センター
としての役割を担うという。
「統合」とは本来リストラや合理化を伴うものであり今回の統合も医療費削減、赤字体質
改善の国立病院、療養所の再編の流れにそうものであるが、国は1+1=1でなく医療の質は
下がらずそれぞれの機能を強化した四国ブロックの基幹医療施設と位置づける。
そして高度で安心安全な医療の提供とともに「誕生から看取りまで癒しに満ち溢れた病院
づくり」を標榜する。
中川院長も2病院の医療分野を融合し、お互いの専門性を生かして理解、連携しより豊かな
「これからの医療の形」をつくりたいと言われる。
我々患者側からすると一つの病院ですむのでアクセス的には便利になったが、どういった
「医療の形」をつくろうとしているのか?ただ単純に統合で診療科目が増えたという事で
はないらしい。新しい形の診療体制とは?今までとどう違ってくるのか?
今ひとつわかりにくい。
小児病院に縁のなかった者にとっては「成育医療」「周産期医療」いずれも聞きなれない
言葉だ。(以下は大まかな説明だが)
まず「周産期医療」とは妊娠中期から出生後数日間の期間をいい産科と新生児科の両方を
統合した医療である。いいかえると小児医療は母親も対象としているという事である。
そして「成育医療」とは胎児から始まり、新生児、小児、思春期、次世代を産み育てる成人
へと連続したライフサイクル(一生の環-わ)として子供を支える医療である。
小児専門病院が出来るまでは大まかに小児医療・成人医療・老人医療とライフステージ(段階)
で医療を捉えていた。即ち小児科以外は子供達は大人と一緒に診療をうけ入院していた。
やがて小児内科以外の各専門小児医療も進歩し子供専門の病棟、診療科を問わず入院中の全て
子供達を集約して医療を提供する小児病院、小児医療センターの誕生となる。
このように発展してきた小児科学、小児医学による医療のお陰で子供の健康は増し尊い命も守
られてきた(感染症による死亡、新生児、乳児の死亡は激減した)
しかし子供の死亡は減ったものの少子化による子供の激減、子供を取り巻く環境や病の変化等
小児医療に新たな問題が生じた。その解決を図ろうとするのが「成育医療」という考えである。
まず小児医療の進歩により子供の頃かかった病気その後の後遺症による治療を大人になっても
続けるいわゆる小児難病患者のキャリーオーバーの問題がある。
この理解がない人は小児病院なのに大人が入院していると不思議がる。
第2に生活様式の変化によりいわゆる「成人病」の若年化の問題。その子が大人になった時特に
女性なら妊娠した時の医療をどうするかは連続的、体系的な繋がりなしに成人の診療科のみでは
充分に対処できない。小児難病患者の女性が成人し妊娠した時も同様である。
第3に児童から思春期に至る精神医療の問題。自閉症、発達障害、学習障害、多動性障害その他
精神疾患。最近よく耳にする性同一性障害も児童、思春期段階で対処してあげることが必要だろ
う。年々増加するこの時期の心身の悩みに対応するために成人とは別個の精神医療の充実が必要
となる。(新病院では精神科病棟の対象となるらしい)
第4に新生児、妊娠、分娩に関して新たな問題も生じている。
新生児医療の進歩により異常新生児や1キロ未満の低体重児等命は救えるようになったが元気で
退院はなかなかおぼつかず新生児〜乳児と集中治療室の医療が続き治療室の確保が問題となる。
少子化傾向にも関わらず不妊治療による多胎児や未熟児の出生は増加している。この問題は周産
期医療、出生前治療を目的とする胎児医療に結びつく。
こうして小児医療は胎児から思春期、成人と横方向にひろがり、少子化対策としての不妊治療、小児難病患者が成人化し妊娠した場合のように小児医療は生殖医療に加え産科医療も含め生命から生命へのバトンタッチという縦方向へひろがる。この縦と横で楕円の環(わ)を描けば「成育医療」という新しい医療システムができあがる。
香川小児病院は国立病院としてはじめて総合周産期母子医療センターとて認可された。
MFICU(母体胎児集中治療室)6床、NICU(新生児集中治療室)9床を備え24時間体制で合併症や切迫流産等のハイリスク妊婦や新生児を受けいれている。